救急で救えた命を、福祉で支える

~ストレッチャーで巡る小江戸川越観光プロジェクトを終えて~

■ 寝たきりでも、いきたい場所へ

先日、バグースケアタクシーは埼玉県川越市において、「寝たきりでも、いきたい場所へ」をテーマにしたバリアフリー観光実証プロジェクトを実施しました。

当日は、さいたまナースケア代表の宮崎看護師と連携し、ストレッチャー利用者を想定したモデルの方とともに、蓮馨寺、菓子屋横丁、大正ロマン通り、時の鐘、喜多院を巡りました。

今回の取り組みは、介護タクシーや民間救急による観光支援の可能性を検証するとともに、病気や障がいがあっても観光をあきらめない社会づくりを目指した実証プロジェクトです。

■ 救急隊員だった頃から気になっていたこと

私は17年間、さいたま市消防局で消防隊・救急隊として活動してきました。

救急隊の役割は命をつなぐことです。しかし、搬送した患者さんのその後を知る機会は決して多くありません。

病院へ引き継いだ後、その方が元気になったのか、社会復帰できたのか、どのような人生を歩んでいるのかを知ることはほとんどありませんでした。

私は救急隊員時代から、そのことがずっと気になっていました。

■ 民間救急になって見えた『その後の人生』

sharyou

現在は民間救急・介護タクシーとして、通院、転院、リハビリ通院、外出支援などに携わっています。

そこで見えてきたのは、救急で命を取り留めた方々の『その後の人生』でした。

障がいが残っても懸命にリハビリを続ける方。退院後の生活を再構築している方。家族との時間を大切にしながら前向きに生きる方。

そうした姿を見るたびに、救急隊時代には見ることのできなかった世界があることを実感しています。

■ 柔道部時代の先輩が教えてくれたこと


今回のプロジェクトには、私の柔道部時代の先輩(Dさん)にもご協力いただきました。

Dさんは、突然の激しい頭痛により救急搬送され、一時は命が危ぶまれる状態となりました。

昏睡状態から意識を取り戻し、複数回の手術と5年以上にわたるリハビリを続けています。

それでも『いつかもう一度歩けるようになりたい』という強い意志を持ち続けています。

そして今回、

『もし自分が誰かの役に立つのであれば、自分が生き延びた意味があると思う』

と話してくださいました。

その言葉は、このプロジェクトの意義を改めて教えてくれました。

■ 川越の街で感じた優しさ

時の鐘周辺をはじめ、小江戸川越は多くの観光客で賑わっていました。

ストレッチャーでの移動に不安もありましたが、実際には多くの方々が自然に道を譲ってくださり、温かく見守ってくださいました。

観光客の皆さまが楽しみながらもストレッチャー利用者に優しく声をかけていただいたり、温かい視線を向けてくださったことは、とても印象的でした。

『障がいがあっても同じ観光地を楽しめる』という当たり前のことが、そこには自然に存在していました。

■ 医療と福祉が連携することで広がる可能性

宮崎看護師とは、実際に医療依存度の高い方を想定しながら、どこまで安全に案内できるのか、体調変化があった場合にどのように対応するのかを確認しました。

介護タクシーだけでも、看護だけでも難しい場面があります。

しかし、医療と福祉が連携することで、外出や観光の可能性は大きく広がります。

今回の実証を通じて、その可能性を改めて確認することができました。

■ 現役の救急隊員へ伝えたいこと

民間救急の仕事を始めてから、ご利用者様やご家族から

『救急隊の方には本当にお世話になりました』

『命を助けていただいて感謝しています』


という言葉を聞く機会が増えました。

救急隊員として活動していた頃には直接聞くことの少なかった言葉です。

そして何より印象的なのは、ご利用者様やご家族が今でも救急隊への感謝を口にされることです。

『あの時、救急隊が来てくれたから今がある』

そんな言葉を聞くたびに、救急隊員として活動していた頃には見ることのできなかった“その後の人生”を感じます。

現役の救急隊員や救急救命士の皆さんに伝えたいことがあります。

皆さんが一分一秒を争いながら搬送した患者さんには、その後の人生があります。

リハビリを頑張っている方もいます。家族と外出を楽しんでいる方もいます。

そして救急隊への感謝を忘れていない方もたくさんいます。

■ 救急で救えた命を、その先の人生まで支える


今回の川越プロジェクトは、観光の実証であると同時に、救急でつながれた命のその後の人生に光を当てる取り組みでもありました。


Dさんは最後にこのように感想を述べられました。
『行きたいところは全部コンプリートできました。本当に、来られてよかった。』
と話してくださいました。

その言葉を聞いた時、私は改めてこのプロジェクトの意味を実感しました。


私たちが提供しているのは単なる移動手段ではありません。
《行きたい場所へ行くこと。》
《好きなものを食べること。》
《家族や仲間と時間を共有すること。》

そんな当たり前の日常や喜びを支えることなのだと思います。

今回の川越バリアフリー観光実証プロジェクトは小さな一歩ですが、病気や障がいがあっても外出をあきらめない社会づくりへの挑戦です。

バグースケアタクシーは、介護タクシー・民間救急として、通院や転院だけでなく『行きたい場所へ行く』という価値を提供していきたいと考えています。

これからも『行きたい場所へ、行ける自由を。』を理念に、一人ひとりの人生に寄り添う支援を続けてまいります。

バグースケアタクシー 代表 増田 晃一


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